Review Santa Feレポート4
Review Santa Feでレビューをした27名のうち、14名が写真集を携えていた。そのうち6名はダミーブック、4名は自費出版、4名が企画出版だったと思う。残りのうち10名もカタログを製作していた。1冊もののダミーブックはさすがに受け取れず、1名は後日六甲山国際写真祭用につくってくれるのを買い取ることにした。2名はオープンポートフォリオビューイング中に実費あるいはディスカウントで買い取った。写真家を支援すると言いながら高い本をタダでいただくことには抵抗があるので、買い取るようにしている。
Santa Fe最終日にはPhoto Eye Book Storeに立ち寄ってきた。従来のBook Storeを閉店し、本来ギャラリーだったところにそっくり引っ越していた。さらに、ギャラリーは昨年からHotel Santa Feという昨年レビュー会場となっていた高級ホテルの敷地内に引っ越していた場所に集約されていた。Photo Eyeの総合ディレクターと声を交わしたが、やはりプリント販売より写真集は勢いがあるようだ。ここでは六甲山国際写真祭用のPhoto Eyeセレクションの参加をお願いしてきた。これはブックストアのディレクターMelanieにイベント趣旨を伝えて例年参加してもらっているものだ。写真集コレクターがよく見ているサイトを巡って情報を収集する方法よりも確実にいい写真集が手に入ると思う。まあどのような写真集が売れているかは、Photo Eyeのサイトなどをみていると確実に見えてくる。Gallery TANTO TEMPOが作った写真集や六甲山国際写真祭のカタログなんかも置いてくれていて面ばゆい気がした。
写真集は未だ勢い衰えることなくどんどん生産されている。あらゆる種類のあらゆるジャンル、そして装丁デザインも欧米は本当に面白い本をコストを度外視してどんどん作っている。僕がそれらの本を面白いと思うのは、逆に日本のそれとは異なったプローチで作られているからだ。製本の方法論が欧米の方が歴史的に深いというのは容易に想像がつく。さらに、クラウドファンディングなどをうまく利用して資金面で充実しているのも理由の一つだと思う。本の綴じ方、表紙のつけ方、活版や型押し、クロスの種類など、国内の製本業がどんどん細っていて方法がしぼんでいく実情に比べると欧米の製本はまだまだ力があるように感じた。国内では作りたいように本を作れない。ダミーブックのワークショップなどでそういった方法を教えているみたいだが、国内の製本も面白いことができるようになれば製本業の勢いを復活させることができるのではないか、などと感じながら面白い写真集を探して歩いた。
写真集を作る理由は様々だが、現状は流行と言っていいほど誰もが写真集を作っている。かつてはいいギャラリーと出会って個展を開くことやコレクターにアクセスすることが目標だったわけだが、現代は写真集製作の垣根が下がって、誰もが写真集の作り方を知っている。イラストレータやIn Designなどの扱いに自信があればデザインや編集など誰にでもできるし、むしろ自由奔放につくることが写真集の価値を生みだしているように思えた。従来、肝心なのは中身だと誰もが考えていたが、写真そのものの力量だけが売り上げを左右するということはこと写真集に限って言えばないように思える。それがいいことかどうかはわからないが、写真がよくコレクターに響くキャッチーな装丁と、紙質やアイデア次第。総合力とでも言おうか。そういう本が売れていくのだ。