Review Santa Feレポート1
Review Santa Feも今年は3回目。3年連続参加してみると、写真のトレンドやイベントの作り方、参加作家がどう選ばれているのかがかなりわかるようになってきます。今年はReview Santa Fe Photo Festivalと枠組み名を変えてまでイベントの方向性を新たに打ち出す必要があったようです。展覧会やコンテスト、レビュー、レクチャーなど豊かな写真リソースを使って総合的に写真のコミュニティーをサポートするというのがその理由です。一方で写真祭やフェア、コンテストが世界中の場所で限りなく増えている状況に異論を唱える専門家が多く、危機感を募らせている現状も見えてきます。Review Santa FeやAngkor Photo Festivalなど、non profitな写真祭とは違って営利目的に開催される写真祭も増えてきているとのことで、そういう時代において写真家がどのイベントを選んで参加するのかということが重要になるとの指摘がありました。
今年も29名の写真家をレビューしました。北欧から南米、アジアまで、世界各国から参加者が集まっていて、僕も7カ国の人たちと話をしました。昨年はパーソナルな写真が多く、レビューそのものはとても難しかった記憶がありますが、今年はアート性の高い作品からジャーナリスティックなものまで、パーソナルなものを含めてバランスが良く、レビューはさほど疲れませんでした。また、例年にもれず質の高い作品が多く、アイデアも豊富で驚かされました。先の記事にも書きましたが、今年は環境風景写真というコンセプトを擁した作品が3名ばかりあり興味深くみることができました。すでに確率したポジションをもっている50代から60代の写真家の参加も多く、レビューに参加する意味がもう一つ描けない日本の写真家の現状とは異なりあらゆる写真、あらゆる方向性に対しても貪欲にアプローチする写真家が多く、作品と社会との橋渡しがきちんとできているシステムの底力を実感することができました。レビュワー陣は、non profitのギャラリーからコマーシャルギャラリー、美術館、大学、出版社など、例年以上に豪華で、今年は僕に続いてアジアから韓国のキュレーターが初めて招かれていました。予選参加者が1700、そこから実行委員会の選抜委員会が100名まで絞り込んでの激戦です。日本人の申込者もたくさんあったとのことですが、実際に予選を突破したのは1名のみでした。地理的に遠いこととコストが高く断念する作家もいるため、グラントを充実させるのがとても大切だという話もありました。
29名のうちギャラリーで個展クラスのプロジェクトを提案できる作家が3名、グループ展で実験的に展示してみたい作家が5名、またMt.ROKKO INTERNATIONAL PHOTO FESTIVALの来年度のゲスト写真家に誘う可能性のある作家が2名ほど。多くの人が僕を希望レビュワー順位で1位か2位に書いてくれていて、ギャラリーや六甲山国際写真祭のことを事前によく研究していました。当たらなかったために残念がっている写真家も多くいました。日本に行きたいという理由が多いのだと思いますが、Review Santa Feから日本に連れ帰ったプロジェクトが年間2つ3つあり、さらに六甲山国際写真祭でもメインゲストに2名を選んでいるなど、確実に成果にしているところが好感されているのです。さらに東洋の視点から見てどのように感じるか、という素直な問いかけもありました。これまでプロジェクトにしたDavid SchalliolやDina Litovsky、Francine Fleischerはその後新しいプロジェクトが次々と生まれています。また今年のMt.ROKKO INTERNATIONAL PHOTO FESTIVALでは昨年Review Santa Feで出会った2名、Wenxin ZhangとHaley Morris-Cafieroがメインゲストとして日本にやってきます。
レビュワー陣とは多くの人が顔見知り程度だった去年とは異なり、今年はより突っ込んだ話し合いをしました。写真の傾向というようなことよりも、写真イベントの質が集客集金に偏っていくことへの危機感を共有する話が多く、お前のところはどうなんだ、という質問もありました。また、ギャラリー間でアーティストを共有交換したり、non profitなイベントを共有する話し合いなど、かなり突っ込んだディスカッションをしてきました。
例年通り、レビュワー陣は金曜夜にGay BlockというReview Santa Feには欠かせない素晴らしい写真家、写真コレクターのプライベートパーティーに誘われました。Gayの家にはダイアン・アーバス、 グルスキー、ブラッサイ、ロバート・フランクなどの壮大なコレクションがあり、毎年驚かされます。ベッドルームツアーというのがあり、寝室や浴室の中にまで踏み込むことが許され、多くのレビュワー共々ため息をつくひと時となりました。
クロージングレセプションは、なんと世界的なコレクター、キュレーターであり、日本人写真家を世界に知らしめた、ヒューストンから世界の写真コミュニティーの立ち上げに尽力したAnne Tuckerの業績を讃えるパーティーが開催され、本人のユーモアをたっぷりとたたえたレクチャーを聞くことができました。これは次の記事でまとめてみます。